平家納経とNHK大河ドラマ「平清盛」 2021.09.01
大河ドラマ「平清盛」の第30巻のタイトルは「平家納経」。
平清盛が一門の総力と財力を投じて作られた平家納経のことが作成過程から映像に盛り込まれたの
です。
一昨日にDVDでこの30巻を見た私はこの感動のことを皆さんに伝えたく、このレポートを作成しました。
(ネットからの画像)
国宝平家納経のことはいろんな写真集や映像で知っており、特に私の母が趣味としていたレザークラ
フトの作品の中に、父のアドバイスを受けて平家納経の中に描かれている鹿のデザインを取って描い
た作品が多くの人から購入を乞われるほど大変評判を呼んだことも私が平家納経に強く惹かれる要
因でした。
ただし、この鹿図は17世紀に修復作業が行われたときの俵屋宗達の補作だそうで金銀泥で描く手法
は踏襲されたが絵の構図は俵屋宗達によって変えられているようです。
平家納経の画像(俵屋宗達補作)
母の作品 縦57センチ 横50センチの大きさ (現在はk.mitikoさん宅にあります)
この平家納経の製作過程が歴史ドラマの中で演じられるとは驚きであり、大感激でもありました。
平家納経は写経という枠の中だけではなく、当時の工芸技術の粋を集めた平安時代の総合芸術の作
品とでも言うべきものです。
平家納経についてはウイキペディアなどの解説はきわめて簡単で、修復作業の様子が大きく取り上げ
られているので、あるサイトで見つけた下記の文章をご参照ください。
平安時代後期の長寛2年(1164)9月、平清盛をはじめ、子息重盛、弟経盛・教盛・頼盛など平家一門の
人々が一巻ずつ結縁(けちえん)書写して厳島神社に奉納した経典群。
各巻とも金銀の優美な金具で飾られた表紙に、経の大意を描いた美しい見返し絵をつけ、料紙は表裏
とも金銀の切りはくをまき、野毛あるいは、あし手を散らすなど意匠をこらしてある。また、水晶の軸に金
銀の装飾金具をつけ、螺鈿(らでん)をするなど当時の工芸技法の粋をつくしている。平安時代(794~
1191)に流行した装飾経の最高峰をなすものであり、大和絵(やまとえ)の史料としても貴重である。
以下載せる画像はテレビ画面からのショットと2005年に奈良国立博物館で催された「厳島神社宝物展」
で入手した画像集からスキャンしたものです。
職人たちが集められ、それぞれの専門分野で作業します。
金粉を振りまく作業のようです。
幅広い金糸とでも言うのでしょうか、その素材を作る作業。
その金糸を一本一本取り上げていく作業
装飾された台紙に行線を定規を使って引く作業。
何の図案か判りませんが、金箔の上に塗っていく作業。
添え木をあてがって引く線引き。
図柄を金色で塗る作業。
人物画像の制作。
黒色なんて一番緊張したでしょうね。
いよいよ写経です。
一門の棟梁、清盛が願文を書きます。
法華経や阿弥陀経、般若心経などの経典を平家一門の人たちが手分けして写経します。
一門の家来たちも加わります。
何しろ、絢爛豪華な台紙に筆写するのですから緊張するでしょうね。
修正液なんかあったのでしょうか。
こんな風に文字の色を変える写経もあったようです。
(ネットからの画像)
中には書き損じることだってあったと思います。
判りますね、この気持ち。
お気の毒に・・・
平家の公達も我が世の春を謳歌するばかりではなかったようで、写経では気苦労も多かったことでしょう。
清盛の腹心の家来、平盛国。
源平時代の家の子郎党たちの主君に対する忠義心の厚さはいろいろ軍記物で目にしますが、この盛
国も清盛死後も壇ノ浦まで一族に付き従い、捕虜となって鎌倉に送られます。
頼朝は命を助けるのですが、飲食を絶って法華経を唱え続けること以外は一切語らず、やがて餓死し
ます。
頼朝はこの盛国の態度を賞賛しています。
平宗清とともに私が尊敬する平家の武将です。(平宗清についてはまた”談話室”でいつか触れさせてもらいます)
その署名
完成した写経は経箱に収められ、厳島神社に奉納されるのです。
(ネットからの画像)
経箱。正式には金銀荘雲龍文銅製経箱(国宝)となっていますが、清盛願文には「金銅篋一合」と記されているそうです。
如何ですか、NHKドラマ「平清盛」と平家納経。
こんな素晴らしい演出もあり、源平時代の多くの登場人物を細部にわたって描いたドラマ「平清盛」を汚いの一言で
否定しさったある県知事。
その軽率な発言を恥じ入って欲しいです。
このドラマ制作に関係した役者やスタッフたちの無念の思いを想像すると私は憤懣やるかたない思いです。
以下は『厳島神社国宝展』の図鑑からスキャンした画像です。
紙背(経文が記された側とは反対側)
紙背
経典表紙の見返し絵
見返し絵 顔の部分が黒ずんでいるのは変色によるものか?
経典巻物
1164年に厳島神社に奉納されてから857年の歳月が流れ、その間に何度も補修・修復がされています。
その様子は下記の「平家納経の模本」ページからご覧ください。
https://www.tnm.jp/modules/